和歌と俳句

春の宵 春宵

僧一人交りて春の宵集ひ 虚子

同じ橋三たび渡りぬ春の宵 漱石

嫉妬とは美しき人の宵の春 虚子


草臥を母とかたれば肩に乘る子猫もおもき春の宵かも

鶴を折る間に眠る児や宵の春 放哉

新内ヲ門二呼ビケリ宵ノ春 放哉

妻もするうつりあくびや春の宵 草城

葛を練る箸のあがきや宵の春 龍之介

春宵の灰をならして寝たりけり 石鼎

藪空に拡ごる星や春の宵 泊雲

春宵や牡丹刷毛打つ音耳に 風生

春宵の母に会ひきし京都かな 櫻坡子

降りいでて外のくらさや春の宵 石鼎

春宵や字を習ひゐる店のもの 播水

春宵の食事終れり観光団 普羅

額つりて小家賑し春の宵 普羅

春宵や光輝く菓子の塔 茅舎

春宵や柱のかげの少納言 虚子