晴るよと見ればかつ散雨のはな
花過て雨にも疎くなりにけり
葉桜の中々ゆかし花の中
廿とせの小町が眉に落花かな
花競ふ寺としもなしひがし山
底た ゝく春の隅より遅ざくら
長き日の脊中に暑しおそ桜
遅き日やひとへからげる草履道
腸を牡丹と申せさくら鯛
春の泊鯛呼声や浜のかた
山吹や胡粉の見ゆる雨の後
すみれ蹈で今去馬の蹄かな
青海苔や石の窪みのわすれ汐
鮎汲や喜撰が嶽に雲か ゝる
あだ花と聞ばけだかし梨のはな
紺かきが竹虎がくれや花林檎
菜の花や雲たち隔つ雨の山
菜の花の紀路見越すや山のきれ
春過て夏箕の川や藤のはな
藤咲て田中の松も見られけり
白藤や猶さかのぼる淵の鮎
行燈をとぼさず春を惜しみけり
行春や狸もすなる夜の宴
おこたりし返事かく日や弥生尽