ピアノの灯新樹の雨に誕生日
青葉木菟ひしどにきけばなほ近く
香を焚き簀戸くる風に朝茶くむ
端居して読みがたし戦場のたよりなり
すいと来ぬ今宵は灯蛾のみなちさく
初蚊帳寝ね臥すときは更けしとき
ほうたるや袂にひとつ得てかへる
萩の門あけよあろじの英霊に
雷打ちて灯絶えてありぬ蛾の羽音
郭公やあまりに近くきけば立つ
郭公や梅雨ぞらのまゝ暮れてゆく
庭にきく郭公海へやるたより
あさの客泰山木を挿してまつ
灯虫掃き寝るときさそり星のあり
蚊火足して若者ばかり泊り客
井戸汲みて撒きておのれが汗涼し
帯かたく扇子あたらし子と街へ
ばらが咲く五月よ切に子を惜しむ
ちまき子に夫に供へ気が済んで
袖かろし夏めく水仕はげまされ