関守の宿を水鶏にとはふもの 芭蕉
水鶏啼くと人のいへばや佐屋泊 芭蕉
此宿は水鶏もしらぬ扉かな 芭蕉
ひるは何を思ひふくみて水鶏哉 千代女
行あたる様にも鳴てくゐな哉 千代女
夢さめてこたへこたへず水鶏哉 千代女
人が門たゝけば逃るくゐな哉 也有
関の戸に水鶏のそら音なかりけり 蕪村
月の出に川筋白しくゐな鳴 召波
遠水鶏小菅の御門しまりけり 一茶
水鶏なく拍子に雲が急ぐぞよ 一茶
木母寺の鉦の真似してなく水鶏 一茶
子規
雨にくち 風にはやれし 柴の戸の 何を力に 叩く水鶏ぞ
叩けとて水鶏にとざすいほり哉 子規
縄朽ちて水鶏叩けばあく戸なり 虚子
寐苦しき門を夜すがら水鶏かな 漱石
雨戸あけて水鶏も啼くといふ貸家 虚子
水鶏来し夜明けて田水満てるかな 碧梧桐
水鶏なく宿に眠れる蕩児かな 普羅
晶子
浴槽にて身を浮草の一もとと見なせる時に鳴く水鶏かな
水鶏なくさとのはやねと申すべし 犀星
濤音をはるかに水鶏きかばやな 鴻村
淀の田は涯なくみづく水鶏かな 青畝
水鶏ゐて波の穂白く明けそめぬ 楸邨
水鶏の巣こゝにあり苗捨てゝあり 花蓑
一つ家を叩く水鶏の薄暑より たかし
同宿の妬き熟睡や水鶏鳴く たかし
はしちかく水鶏月夜の文机 蕪城
水鶏笛吹けばくひなの思い切 多佳子
未明すでに溲罎は見ゆれ水鶏叩く 波郷