和歌と俳句

藤原雅経

鳥羽百首

むらしぐれ あとよりはれし 山の端の やがて曇るや ゆきげなるらむ

あさとあくる ながめは霜の ここちして まつにはならず 薄雪の色

わけなれし 木の葉のうへに 雪つみて あとたえはつる 秋のふるさと

夜半さゆる 冬のあしたに ながむれば まつみやこには をのやまの雪

みよしのの いはのかけみち あとたえて 人やはかよふ 雪深きころ

ほどもなく あはれも深き ながめかな こまかに積もる 夕暮れの雪

ときはなる 松のみどりも うづもれて なにのこずゑの 雪のむらだち

たれか見る よふかくあくる まきのとに 雪よりしらむ 庭のあけぼの

このごろは かけのかよひぢ こころせよ 吹雪にこゆる 越の旅人

岩代の をのへの松に 雪ふれば 風の音まで むすぼほれつつ

たづねばや あすはみやこに 年こえて 春は今宵や 関のあなたに

春よいかに 年をこめてや 立ちぬらむ 宵よりかすむ おもかげの空

春立たむ 氷の下の おもかげや うち出でがたの 波の初花

月をのみ めづるつもりも 今宵にて 年こそひとの おいとなるもの

いたづらに あはれあな憂と おもひきて 過ぎし日数の ひととせのはて

おほかたの 日数もけふの ながめにて 暮れはてぬるか 年のゆふぐれ

みなひとの 年のつもりぞ あはれなる いそぐけしきを 見るにつけても

ゆくとしを おくりはてつる うたたねの 夢路にちかき 春のあけぼの

はかなしと おもひはてつる ながめより 袂につもる けふのとしなみ