和歌と俳句

住吉

頼政
ひとすぢに あふぐ心を 住吉の 空ゆくに わけぞやらるる

顕輔
住吉の 浜松が枝の 夕けぶり 晴れぬ思ひは 神ぞ知るらむ

顕輔
住吉の 松のたえまの 紅葉にや 津守のあまは 秋を知るらむ

俊恵
君が代の 数とや神も 定むらむ しきなみかくる 住吉の松

俊恵
君が経む よはひをかねて 幾千代と 浪の数とる 住吉の松

俊恵
君が経む 千代のかざしか いつとなく 浪もて結へる 住吉の松

俊成
浦風に神さびにけり住吉の松のひまより見ゆるかたそぎ

俊成
忘草つみにこしかど住吉の岸にしもこそ袖はぬれけれ

俊成
心なきこころもなをぞつきはつる月さへすめる住吉の濱

俊成
いたづらにふりぬる身をも住吉の松はさりともあはれしるらむ

西行
波にやどる月を汀にゆりよせて鏡にかくるすみよしの岸

西行
住吉の松が根洗ふ波の音を梢にかくる沖つ潮風

寂蓮
月は猶もらぬ木の間もすみよしの松をつくして秋風ぞ吹く

寂蓮
ふりにける こずゑもしるき 住吉の まつにすぎたる 風の音かな

新古今集・雑歌 後冷泉院御歌
待つ人は心ゆくともすみよしの里にとのみは思はざらなむ

御返事 大弐三位
住吉の松はまつともおもほえで君がちとせのかげそ恋しき

定家
浪風のこゑにも夏は忘れ草日かずをぞつむ住吉の濱

定家
春霞いま行くすゑをおしこめておもふもとほきすみよしの松

俊成
住吉の松吹く風はおくれども心ぞとまる過ぐる舟人

俊成
子の日には野邊ならねども住吉の松のかげにて祈るばかりぞ

俊成
かへる春けふのふなてはむやひせよなほ住吉の松かげにして

俊成
うきなから久しくぞよを過ぎにけるあはれやかけし住吉の松

俊成
うらなみせ立ち別るとも住吉の松をたのむぞ頼みなるべき

良経
住吉の岸に生ひける松よりもなほ奥深き秋風のこゑ

定家
わかの浦の浪にこころはよすときくわれをばしるや住吉の松

良経
住吉の松のしづえを洗ふなみ氷らぬ聲ぞいとど寒けき

定家
秋の夜はつむといふ草のかひもなし松さへつらき住吉の涯

定家
松かげや岸による波よるばかりしばしぞすずむ住吉の浜

俊成
しきしまやみちをはことに住吉の松もうれしと千代をそふらむ

雅経
すみよしの 松にたのみを かけおきて けふはうれしき なみのしらゆふ

新古今集 定家
わが道をまもらば君をまもるらむよはひはゆづれ住吉の松

俊成
住吉の松もすずしく思ふらし君が千歳の和歌の浦

定家
かたばかりわれはつたへしわがみちのたえや果てなむ住吉の神

定家
淡路島むかひのくものむらしぐれ染めもおよばぬ住吉の松

実朝
住吉の松の木隠れゆく月の朧にかすむ春の夜の空

定家
けふぞ見るはるのうみ邊の名なりけり住吉のさとすみよしのはま

定家
住吉の松やいづこと降る雪にながめもしらぬとほつふなびと


住よしや河掘添て春の海 凡兆

住吉に天満神のむめ咲ぬ 蕪村


子規
貝拾ふ子等も帰りぬ夕霞鶴飛びわたる住吉の方に

子規
白砂に松葉吹き散る水無月の風緑なり住吉の宮

牧水
住吉は青のはちす葉白の砂秋たちそむる松風の声

住吉の道のべの宿や爐をひらく 蛇笏

住吉に住みなす空は花火かな 青畝

住吉の砂の音聞く茅の輪かな 青畝