けふぞ見る春のうみ邊の名なりけり住吉のさとすみよしのはま
このごろは南の風にうきみるのよるよるすずしあしの屋の里
さならでも秋のおもかげ大淀の松をつらしと浦風ぞ吹く
はげしさにしほやの烟立ちかねて村雲なびく冬のうらかぜ
庭もせの花の白雪かぜふけばいけのかかみぞくもり果てぬる
若くよりひく人なくてしをれこし身に似ぬ池のあやめ草かな
秋の夜の月にこころや浮かびけむ昔の人の古き池水
鴛鴨の色にうつろふ池水にそれとも見えぬ蘆のしをれ葉
春といへば空ゆくかぜに立つなみの花に埋めるしらかはの水
大井河なつのみ結ぶとまやかたみじか夜ならぬ月もやどらじ
秋風に夜わたる月のすみだ川ながめむそらはみやこなりとも
行く人の思ひかねたる道のべをいたくな吹きそ冬の河かぜ
さくら色のうつるも知らぬ山がつも田面の花は袖に散りつつ
小山田にしげる五月のうき草は我がこころより種やまきけむ
秋の田をてらす稲妻よそへても見れば程なし忘れ形見に
あぜつたひもりくる水もこほりゐてかり田淋しき冬の山かげ
百千鳥さへづる春もふりはてて我がやどならぬ花をやは見る
なれをだに待つこともなし時鳥われ世の中と音のみ憂へて
初雁にまだありあけとつたふとも誰かは月のなさけかくべき
濱千鳥とまらば雪の跡もうし鳴きてもいはむかたはなぎさに