くるとあくとおもひし月日杉の庵の山路つれなく年は経にけり
きえせぬはあはれ幾世のおもひ川むなしく越えし瀬々のうき浪
海わたり浦こぐ舟のいたづらにいそぢを過ぎて濡れし袖かな
あれまくや伏見の里のいでがてに憂きを知らでぞ今日にあひぬる
いまはまた関の藤浪たえずとも國に報いむためをこそおもへ
くもりなきみどりの空を仰ぎても君が八千代をまづ祈るかな
みかさ山松の木のまを出づる日のさして千歳の色は見ゆらむ
秋のつき久しき宿にかげなびくまがきの竹はよろづ世やへむ
くもりなき千代のかずかずあらはれて光さしそへ星のやどりに
やまびとのよはひを君のためしにてちとせのさかにかかるしらくも
身をしればいのるにはあらで頼みこし五十鈴川浪哀かけけり
石清水月には今もちぎりおかむ三たびかげみし秋のなかばを
神も見よかもの川浪ゆきかへりつかふる道にわけぬこころを
祈りおきしいかなる末に春日山捨てて久しきあとのこりけむ
かたばかりわれはつたへしわがみちのたえや果てなむ住吉の神
天つそら光をわかつよつの身になにの草木ももるるものかは
きさらぎのなかばの空をかたみにて春のみやこを出でし月影
九重の花のうてなをさだめずばけぶりの下やすみかならまし
十あまり二つのちかひきよくしてみがける玉の光をぞしく
花の匂ふ四重の大空とほからであかつき待たぬ逢ふこともがな