和歌と俳句

藤原雅経

後鳥羽院第二度百首

はれくもり あらしにさゆる むらくもの しぐるとすれば 初雪の空

寂しさは 枯野のはらの すゑよりも 雪のあしたの とほやまのまつ

ふりにける あとともけさは 見えぬかな 志賀のみやこの 雪のはなぞの

みかりのや 雪はふりきぬ これもまた ぬるとも花の はるのおもかげ

たづねくる 人は音せで 三輪の山 杉のこずゑの 雪のしたをれ

いしはしる 清滝川に たまちりて むすびかねたる 薄氷かな

そこ清き 玉江の水の 薄氷 やどらぬ月も 見るここちして

霜こほる 尾花がすゑも 波のおとも むすぼほれたる 真野のうらかぜ

あらしやま このはのおとも おちはてて となせの滝は こほりしてけり

やまかはの いはもとたぎつ ゆく水の こほるべしとも 見えしものかは

きみがため あけはじめてや ひさかたの 天の岩戸の いにしへの空

石清水 そのみなかみを おもふにも ながれてすゑは 久しかるべし

かもやまの たかねにかかる 白雲や わけしなごりの 空のかよひぢ

すみよしの 松にたのみを かけおきて けふはうれしき なみのしらゆふ

わけうつす おなし日吉の 影なれや 光はこれぞ 明けのたまがき

おしなべて たづねぬやまの 花もみつ へだつる雲の へだてなければ

とほざかる こゑも惜しまじ ほととぎす きき残すべき よもの空かは

よよをへて すぎにしかたを おもふにも なほくもりなし 夜半の月影

みな人の こころこころぞ 知られける 雪ふみわけて とふもとはぬも

おもひたつ ほどこそなけれ 東路に まだしらかはの 関のあなたは