和歌と俳句

藤原雅経

後鳥羽院第二度百首

かすみしく 朧月夜と 見しものを へだてはてつる さみだれの空

ながめやる 生駒の山の みねの雲 いくへになりぬ さみだれの空

さみだれは もとの汀も 水こえて 波にぞさわぐ 井手のうきくさ

さみだれの ころともいはじ いつとても 雲は軒端の やまかげのいほ

わが袖に むかしはとはむ たちばなの 花散る里の さみだれの空

袖のうへに うつれる色や それならぬ をりはやつまし 秋萩の花

野辺はねや 草葉はおのが 枕にて 露にのみ臥す をみなへしかな

荻原や 風まつくれの 下露を よそにもかこつ をみなへしかな

はなすすき なにとて秋を 待ちけらし しのびし程は 露かかりきや

まねく尾花 うらむる葛に こととへば ただ秋風の 野辺の夕暮

秋よただ ゆふべの空を あはれとも ながめはつれば 山の端の月

はなのはる なれしなごりの おもかげよ 秋の月とは ちぎらざりしを

ひかりもる 軒のしのぶの 露ながら 袖にみだるる 夜半の月影

ながめわび ふけゆくままの 袖の露 月やはつらき 秋の夜の空

月影の なごりをのみや ながむべき 秋もいくよの ありあけの空

そむるより こころやつくす たつたひめ あらし吹きそふ 秋のこずゑに

しぐれゆく 木々のこずゑや うつるらむ 露もいろづく もりの下草

たづね入る 秋はとやまの 色なれや これよりおくは まつかぜのこゑ

秋はなほ たえずや松の 下紅葉 おもひもすてぬ いろを見すらむ

やどうづむ のきばの蔦の 色をみよ みやまの里の 秋のけしきを