ゆく人も かへるも見ゆる 淀川は 波の心も いとなかるらむ
住吉の 岸をりかへし かへしても たちよらまくの 欲しき君かな
うちしきり たちより来とも 岸とほみ よそにぞかへる 沖つ白波
おぼつかな 曇れる空の 月なれば 心やましき 夜半にもあるかな
ちはやふる 神に祷りし 逢ふことは 草葉につけて 今日ぞ見ゆめる
みな人の なべてかざせば 葵草 いづれをそれの しるしとかみむ
山の端に 入りと入りにし 月なれば しらへていたす こともかひなし
逢坂の せきぢに年は 経ぬれども けふの清水や 名をば流さむ
あまつ風 ふけひの浦に すむたづの などか雲居に かへらざるべき
よに人の および難きは 富士の山 麓にたかき 思ひなりけり
後撰集・恋
誰となく おぼろに見えし 月影に わくる心を おもひ知らなむ
後撰集・離別羈旅
今はとて たちかへりゆく ふるさとの 不破の関路に みやこわするな
後撰集・慶賀哀傷
君がため 移して植うる くれ竹に ちよもこもれる ここちこそすれ
後撰集・慶賀哀傷
きくにだに つゆけかるらむ 人のよを めにみし袖を 思ひやらなむ
後撰集・慶賀哀傷
君がいにし 方やいづれぞ 白雲の ぬしなきやどと 見るが悲しさ
新勅撰集・羈旅
かりそめの わかれとおもへど たけくまの まつのほどへん ことぞくやしき