万葉集巻八 桜井王
九月のその初雁の使ひにも思ふ心は聞こえ来ぬかも
素性法師
今来むといひしばかりに九月の有明の月を待ち出でつるかな
躬恒
秋深み恋する人の明かしかね夜を長月といふにやあるらん
好忠
いとどしく夜をなが月になりぬれば寝ざめがちにて明すべきかな
好忠
なが月の萩の刈生に置く露は花をしのぶる鹿の涙か
新古今集 春宮権大夫公継
寝覚めする長月の夜の床さむみ今朝吹く風に霜や置くらむ
新古今集 慈円
長月もいくありあけになりぬらむ浅茅の月のいとどさびゆく
俊成
いつとても有明方は露けきをなほ限りなし長月のそら
西行
長月の余りにつらき心にて忌むとは人のいふにやあるらん
続後撰集・秋 定家
いかにせむ きほふこのはの こがらしに たえずものおもふ 長月の空
長月や夜々の薫物貝の中 喜舟
長月や豆のまきひげ黄に枯るゝ 占魚