和歌と俳句

藤原俊成

そらはれてちりくるはひさかたの月の桂の花にやあるらむ

まきもくのたま木の宮にふればさらに昔のあしたをぞ知る

紫の庭のには猶しかじみなしろたへのみよしのの山

白妙のいさごまきしく天の河月のみやこのみ雪なるべし

とふ人もさらでもあらじ山里にふかくも道を埋むかな

新古今集・神祇
神風や五十鈴の河の宮ばしら幾千世すめとたてはじめけむ

そのかみに祈りし末は忘れじをあはれはかけよ加茂のかは波

秋のくれ民の家をばいでしかどなほ春の日のたのまるるかな

しき波にたのみをかけし住の江の松もや今は思ひすつらむ

なべて世を照らす日吉の神なればあまねく人も頼むなりけり

くれはつる年はわが身につもるなり冬のゆくらむ方ぞしられぬ

くれてゆく冬は北にや帰るらむなほ越路には雪つもるなり

ひきとめむ方こそなけれ行く年はきの関守がゆみならなくに

あはれなり世に數ならぬ老の身を猶たづねてもつもる年かな

老いぬともまたもあはむとゆくとしに涙の玉を手向けつるかな

はかりなく數なき世々をつくしてもひとたび聞くは難き御法を

わかの浦や浪にかきやるもしほ草これもよしなきすさびなりけり

昔はやさとりはれにし月かげをこよひみ山をいでしとや見し

あはれとやともに光をてらしけむ二つにわけし玉のかざりを

さらにまた花ぞふりしく鷲の山法のむしろのくれがたの空