後拾遺集・羇旅
蘆の屋の昆陽のわたりに日は暮れぬいづち行くらん駒にまかせて
後拾遺集・羇旅
白雲の上より見ゆるあしひきの山の高嶺やみさかなるらん
後拾遺集・羇旅
思ふ人ありとなけれどふるさとはしかすがにこそ恋しかりけれ
後拾遺集・羇旅
世の中はかくても経けり象潟の海士の苫屋をわが宿にして
後拾遺集・哀傷
主なしとこたふる人はなけれども宿のけしきぞ言ふにまされる
後拾遺集・哀傷
契りありてこの世にまたは生まるとも面変りして見もや忘れむ
後拾遺集・恋
こほりとも人の心を思はばやけさ立つ春の風にとくべく
後拾遺集・恋
錦木は立てながらこそ朽ちにけれけふの細布むねあはじとや
後拾遺集・恋
閨ちかき梅の匂ひに朝な朝なあやしく恋のまさるころかな
後拾遺集・雑歌
あさぢ原荒れたる宿はむかし見し人をしのぶのわたりなりけり
後拾遺集・雑歌
武隈の松はこのたびあともなし千歳をへてやわれは来つらん
後拾遺集・神祇
有度浜にあまの羽衣むかし来てふりけん袖やけふの祝子
後拾遺集・俳諧歌
白波の立ちながらだに長門なる豊浦の里のとよられよかし