和歌と俳句

後拾遺和歌集

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大和宣旨
はるばると野中に見ゆる忘れ水絶えま絶えまを歎くころかな

大納言忠家
いかばかり嬉しからまし面影に見ゆるばかりの逢ふ夜なりせば

よみ人しらず
わがやどの軒のしのぶにことよせてやがてもしげる忘れ草かな

皇太后宮陸奥
逢ふことを今はかぎりと三輪の山杉の過ぎにし方ぞこひしき

よみ人しらず
杉村といひてしるしもなかりけり人のたづねぬ三輪の山もと

相模
住吉の岸ならねども人知れぬ心のうちの松ぞ侘しき

僧都遍救
逢坂の関の清水や濁るらん入りにし人のかげもみえぬは

左京大夫道雅
なみだやはまたもあふべきつまならん泣くよりほかの慰めぞなき

前律師慶暹
よそ人になりはてぬとや思ふらん恨むるからに忘れやはする

大中臣輔弘
つらしとも思ひしらでぞやみなまし我もはてなき心なりせば

和泉式部
なかなかに憂かりしままにやみにせば忘るる程になりもしなまし

和泉式部
憂き世をもまたたれにかはなぐさめん思ひしらずもとはぬ君かな

源政成
あふまでや限りなるらんと思ひしを恋はつきせぬものにぞありける

左京大夫道雅
逢坂は東路とこそききしかど心づくしのせきにぞありける

左京大夫道雅
榊葉やゆふしでかけしそのかみにおしかへしても渡るころかな

左京大夫道雅
今はただ思ひたえなんとばかりを人づてならでいふ由もがな

左京大夫道雅
みちのくの緒絶の橋やこれならん踏みみ踏まずみ心まどはす

前大納言経輔
恋ひしさも忘れやはするなかなかに心さわがす志賀の浦浪

相模
来じとだにいはで絶えなば憂かりける人のまことをいかでしらまし

相模
ただ袖に君かさぬらん唐衣夜な夜なわれにかたしかせつつ