かひなくてさすがにたえぬ命かな心をたまの緒にしよらねば
後拾遺集・雑歌
ものをのみ思ひしほどにはかなくて浅茅が末に世はなりにけり
いかばかり勤むることもなきものをこはたが為に拾ふ木の實ぞ
くらきよりくらき道にぞ入ぬべきはるかにてらせ山の端の月
はれやらぬ身のうき雲のたな引て月のさはりとなるぞかなしき
後拾遺集・雑歌
かへるさをまちこころみよかくながらよもただにては山科の月
後拾遺集・俳諧歌
はかなくも忘られにける扇かな落ちたりけりと人もこそ見れ
あかざりしむかしのことをかきつくる硯の水はなみだなりけり
夜の程にかりそめ人やきたりけん淀のみこものけさみだれたる
新勅撰集・雑歌
いかにせむ天の下こそ住みうけれふれば袖のみまなくぬれつつ
後拾遺集・俳諧歌
さならでも寝られぬ物をいとゞしくつきおどろかす鐘の音かな
くれぬめりいくかをかねて過ぬらん入相の鐘のつくづくとして
夕暮は雲のけしきをみるからにながめじと思ふ心こそつけ
新勅撰集・雑歌
すみよしの有明の月をながむればとをざかりにし影ぞこひしき
新古今集・雑歌
かくばかりうきを忍びてながらへばこれより勝る物をこそ思へ