和歌と俳句

和泉式部

かひなくてさすがにたえぬ命かな心をたまの緒にしよらねば

後拾遺集・雑歌
ものをのみ思ひしほどにはかなくて浅茅が末に世はなりにけり

いかばかり勤むることもなきものをこはたが為に拾ふ木の實ぞ

くらきよりくらき道にぞ入ぬべきはるかにてらせ山の端の月

はれやらぬ身のうき雲のたな引て月のさはりとなるぞかなしき

後拾遺集・雑歌
かへるさをまちこころみよかくながらよもただにては山科の月

後拾遺集・俳諧歌
はかなくも忘られにける扇かな落ちたりけりと人もこそ見れ

あかざりしむかしのことをかきつくる硯の水はなみだなりけり

夜の程にかりそめ人やきたりけん淀のみこものけさみだれたる

新勅撰集・雑歌
いかにせむ天の下こそ住みうけれふれば袖のみまなくぬれつつ

後拾遺集・俳諧歌
さならでも寝られぬ物をいとゞしくつきおどろかす鐘の音かな

くれぬめりいくかをかねて過ぬらん入相の鐘のつくづくとして

夕暮は雲のけしきをみるからにながめじと思ふ心こそつけ

新勅撰集・雑歌
すみよしの有明の月をながむればとをざかりにし影ぞこひしき

新古今集・雑歌
かくばかりうきを忍びてながらへばこれより勝る物をこそ思へ