後拾遺集・冬
さびしさに煙をだにもたたじとて柴をりくぶる冬の山里
後拾遺集・哀傷
なき人のくるよときけど君もなし我がすむやどやたまなきの里
後拾遺集・恋
おぼめくなたれともなくて宵々に夢にみえけむ我ぞそのひと
後拾遺集・恋
下きゆる雪間の草のめづらしく我が思ふ人に逢ひ見てしがな
後拾遺集・恋
おきながらあかしつるかなともねせぬ鴨の上毛の霜ならなくに
後拾遺集・恋
見し人に忘れられてふる袖ににこそ身をしる雨はいつもをやまね
後拾遺集・恋
今宵さへあらばかくこそ思ほえめ今日暮れぬまの命ともがな
後拾遺集・恋
なかなかに憂かりしままにやみにせば忘るる程になりもしなまし
後拾遺集・恋
憂き世をもまたたれにかはなぐさめん思ひしらずもとはぬ君かな
後拾遺集・恋
なきながす涙にたへでたえぬればはなだの帯の心地こそすれ
後拾遺集・恋・小倉百人一首
あらざらむこの世のほかのおもひでに今ひとたびの逢ふこともがな
後拾遺集・恋
われといかにつれなくなりて試みんつらき人こそ忘れがたけれ
後拾遺集・恋
たぐひなき憂き身なりけり思ひしる人だにあらばとひこそはせめ
後拾遺集・恋
君こふる心はちぢに砕くれど一つもうせぬものにぞありける
後拾遺集・恋
さまざまに思ふ心はあるものをおしひたすらに濡るる袖かな
後拾遺集・雑歌
ふしにけりさしも思はば笛竹のおとをぞせまし夜更けたりとも
後拾遺集・雑歌
いづくにかきても隠れむ隔てつる心の隈のあらばこそあらめ
後拾遺集・雑歌
しのぶべき人もなき身はあるをりにあはれあはれといひやおかまし
後拾遺集・雑歌
かたらへばなぐさむこともあるものを忘れやしなむ恋のまぎれに
金葉集・雑
あさましや剣の枝のたわむまでいかなる罪のなれるなるらむ
詞花集・恋
我のみや思ひおこせむあぢきなく人はゆくへも知らぬものゆゑ
詞花集・恋
なみださへいでにしかたをながめつつ心にもあらぬ月をみしかな
詞花集・雑
秋はみな思ふことなき荻の葉も末たわむまで露は置くめり
詞花集・雑
音せぬは苦しきものを身にちかくなるとていとふ人もありけり
千載集・恋
いかにして夜の心をなぐさめむ昼はながめにさてもくらしつ
千載集・恋
これもみなさぞなむかしの契りぞと思ふものからあさましきかな
千載集・恋
待つとてもかばかりこそはあらましか思ひもかけぬ秋の夕暮
千載集・恋
ほどふれば人は忘れてやみぬらん契りしことをなほ頼むかな
千載集・恋
音を泣けば袖は朽ちても失せぬめりなほ憂きことぞ尽きせざりける
千載集・恋
ともかくもいはばなべてになりぬべし音に泣きてこそ見すべかりけれ
千載集・恋
恨むべき心ばかりもあるものをなきになしても問はぬ君かな