和歌と俳句

千載和歌集

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相模
うたたねにはかなく覚めし夢をだにこの世にまたは見でややみなん

和泉式部
音を泣けば袖は朽ちても失せぬめりなほ憂きことぞ尽きせざりける

和泉式部
ともかくもいはばなべてになりぬべし音に泣きてこそ見すべかりけれ

和泉式部
有明の月見ずひさに起きていにし人のなごりをながめしものを

紫式部
忘るるは憂き世の常と思ふにも身をやるかたのなきぞわびぬる

馬内侍
ちはやぶる賀茂のやしろの神も聞け君忘れずは我も忘れじ

大弐三位
うたがひし命ばかりはありながら契りし中の絶えぬべきかな

相模
狩人はとがめもやせむ草しげみあやしき鳥の跡の乱れを

大納言斉信
山よりも深きところを尋ねみば我が心にぞ人は入るべき

藤原経衡
いにしへも越えみてしかば逢坂はふみたがふべき中の道かは

赤染衛門
かりにぞといはぬさきより頼まれずたちとまるべき心ならねば

藤原基俊
人ごころなにを頼みて水無瀬川せきの古くひ朽ちはてぬらん

隆源法師
恨みずは忘れぬ人もありなまし思ひ知らでぞあるべかりける

中院右大臣雅定
まことにや三とせもまたで山城の伏見の里ににひまくらする

待賢門院堀河
憂き人を忍ぶべしとは思ひきや我が心さへなど変るらん

上西門院兵衛
憂かりける世々の契りを思ふにもつらきはいまの心のみかは

前参議親隆
知るなればいかに枕の思ふらん塵のみつもるとこのけしきを

右大臣実定
はかなくも来ん世をかねて契るかなふたたびおなじ身ともならじを

右近中将忠良
思ひ出でよ夕べの雲もたなびかばこれや歎きに絶えぬけぶりと

左兵衛督隆房
恋ひ死なばうかれん魂よしばしだに我が思ふ人の褄にとどまれ

太皇太后宮小侍従
君恋ふとうきぬる魂の小夜ふけていかなる褄にむすばれぬらん

二條院讃岐
君恋ふる心のやみをわびつつはこの世ばかりと思はましかば

殷富門院大輔
変りゆくけしきを見ても生ける身の命をあだに思ひけるかな

俊恵法師
君やあらぬ我が身やあらぬおぼつかな頼めしことのみな変りぬる

円位法師
物思へどかからぬ人もあるものをあはれなりける身の契りかな

円位法師
歎けとて月やは物を思はするかこちがほなる我が涙かな

寂超法師
ひさかたの月ゆゑにやは恋ひそめしながむればまづ濡るる袖かな