和歌と俳句

後拾遺和歌集

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少将内侍
近きだにきかぬ禊をなにかそのから神まではとほくいのらむ

伊賀少将
忘るるも苦しくもあらずねぬなはのねたくと思ふ事しなければ

少将藤原義孝
ならされぬみそののうりとしりながらよひあかつきとたつぞ露けき

左大将朝光
おひたつをまつと頼めしかひもなく浪こすべしときくはまことか

源道済
いつしかとまちしかひなく秋風にそよとばかりもをぎの音せぬ

和泉式部
君はまだしらざりけりな秋の夜のこのまの月ははつかにぞみる

相模
さもこそは心くらべにまけざらめ早くもみえし駒のあしかな

中原長國
おのづからわが忘るるになりにけり人の心をこころ見しまに

律師朝範
恨みずばいかでか人にとはれましうきもうれしきものにぞありける

相模
綱たえてはなれはてにしみちのくのをぶちの駒をきのふみしかな

相模
言の葉につけてもなどかとはざらむ蓬の宿もわかぬあらしを

返し 中納言定頼
八重ぶきのひまだにあらば蘆のやにおとせぬ風はあらじとをしれ

藤原実方朝臣
わりなしや身はここのへのうちながらとへとは人の恨むべしやは

中宮内侍
しばしこそ思ひもいでめ津の國のながらへゆかば今わすれなむ

上總大輔
これもさはあしかりけりな津の國のこやことづくるはじめなるらむ

土御門御くしげどの
心えつあまのたくなはうちはへてくるをくるしと思ふなるべし

祭主輔親
かずならぬ人をのがひの心にはうしともものをおもはざらなむ

大貮成章
磯なるる人はあまたに聞こゆるを誰がなのりそをかりて答へむ

和泉式部
とへとしも思はぬ八重の山吹をゆるすといはばをりにこむとや

和泉式部
あぢきなく思ひこそやれつれづれとひとりやゐでの山吹の花

少将内侍
ねぬ縄の苦しきほどのたえまかとたゆるをしらで思ひけるかな

式部命婦
行く末を流れてなににたのみけむ絶えけるものを中河の水

和泉式部
長しとて明けずやはあらむ秋の夜はまてかし真木のとばかりをだに

藤原道信朝臣
天の原はるかに渡る月だにもいづるは人にしらせこそすれ

藤原元真
うきこともまだ白雲の山のはにかかるやつらきこころなるらむ

斎宮女御
ふく風になびく浅茅は我なれや人のこころのあきをしらする