新古今集・哀傷
ねざめする 身を吹きとほす 風のおとを 昔は袖の よそに聞きけむ
新古今集・哀傷
恋ひわぶと 聞きにだに聞け 鐘の音に うち忘らるる 時の間ぞなき
新古今集・恋
あとをだに草のはつかに見てしがな結ぶばかりの程ならずとも
新古今集・恋
今朝はしも歎きもすらむいたづらに春の夜ひと夜夢をだに見で
新古今集・恋
今来むといふ言の葉もかれゆくに夜な夜な露の何に置くらむ
新古今集・恋
いかにしていかにこの世にありへばか暫しも物を思はざるべき
新古今集・雑歌
夕暮れは雲のけしきを見るからにながめじと思ふ心こそつけ
新古今集・雑歌
暮れぬめり幾日をかくて過ぎぬらむ入相の鐘のつくづくとして
新古今集・雑歌
たらちねのいさめしものをつれづれと眺むるをだに問ふ人もなし
新古今集・雑歌
秋風はすごく吹けども葛の葉のうらみがほには見えじとぞ思ふ
新勅撰集・羇旅
こしかたを やへのしらくも へだてつつ いとどやまぢの はるかなるかな
新勅撰集・恋
けふのまの こころにかへて おもひやれ ながめつつのみ すぐすつきひを
新勅撰集・恋
よのつねの ことともさらに おもほえず はじめてものを おもふ身なれば
新勅撰集・恋
ゆめにだに 見であかしつる あかつきの こひこそこひの かぎりなければ
新勅撰集・恋
みえもせむ みもせむひとを あさごとに おきてはむかふ かがみともがな
新勅撰集・恋
ちりのゐる ものとまくらは なりにけり なにのためにか うちもはらはむ
新勅撰集・恋
あふことを たまのをにする 身にしあれば たゆるをいかが かなしとおもはぬ
新勅撰集・恋
ををよわみ みだれておつる たまとこそ なみだもひとの めにはみゆらめ
新勅撰集・恋
さもらばあれ くもゐながらも やまのはに いでいるよひの 月とだに見ば
新勅撰集・雑歌
さらにまた ものをぞおもふ さならでも なげかぬときの ある身ともなく
続後撰集・恋
かくこひは たへぞしぬべし よそに見し 人こそおのが 命なりけれ
続後撰集・恋
逢ふことの ありやなしやも みもはてで 絶えなむ玉の 緒をいかにせむ
続後撰集・恋
ふべきよの かぎりもしらず その程も いつと契らむ ことのはかなさ
続後撰集・恋
あふことは さらにもいはず 命さへ ただこのたびや かぎりなるらむ
続後撰集・恋
をしむらむ 人の命は ありもせよ まつにもたへぬ 身こそなからめ
続後撰集・恋
とへと思ふ 心ぞたえぬ 忘るるを かつみくまのの 浦のはまゆふ
続後撰集・恋
しのばれむ ものともみえぬ わが身かな あるほどだにも 誰かとひける
続後撰集・恋
たぐひなく 悲しきものは 今はとて またぬゆふべの ながめなりけり
続後撰集・雑歌
緒をよはみ 絶えてみだるる 玉よりも ぬきとめがたし 人の命は