和歌と俳句

新勅撰和歌集

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よみ人しらず
夢にだに まだ見ぬ人の 恋ひしきは そらにしめゆふ 心地こそすれ

よみ人しらず
いにしへは ありもやしけむ 今ぞしる まだ見ぬ人を 恋ふるものとは

よみ人しらず
かすがやま あさゐるくもの おぼつかな しらぬ人にも 恋ひわたるかな

よみ人しらず
あしわかの うらにきよする しらなみの しらじなきみは われおもふとも

よみ人しらず
いはみがた うらみぞふかき おきつなみ よするたまもに うづもるる身は

よみ人しらず
なにはえの こやに夜ふけて あまのたく しのびにだにも あふよしもがな

よみ人しらず
あさなあさな あまのさをさす うらふかみ およばぬこひも 我はするかな

業平朝臣
いへばえに いはねばむねに さわがれて こころひとつに なげくころかな

權中納言敦忠
雲井にて くもゐに見ゆる かささぎの はしをわたると 夢に見しかな

返し よみ人しらず
ゆめなれば 見ゆるなるらん かささぎは こよひのひとの こゆるはしかは

忠義公
いろにいでて いまぞしらする ひとしれず おもひわびつる ふかきこころを

中納言朝忠
いはでのみ おもふこころを しるひとは ありやなしやと たれにとはまし

返し 本院侍従
しるひとや そらになからん おもふなる こころのそこの こころならでは

太宰帥敦道親王
うちいでで ありにしものを なかなかに くるしきまでも なげくけふかな

返し 和泉式部
けふのまの こころにかへて おもひやれ ながめつつのみ すぐすつきひを

藤原高光
こひやせん わすれやしなん ぬともなく ねずともなくて あかしつる夜を

道信朝臣
いつまでと わがよのなかも しらなくに かねてもものを おもはするかな

相模
いかでかは あまつそらにも かすむべき こころのうちに はれぬおもひを

藤原義孝
ひとしれぬ こころひとつに なげきつつ つげのをぐしぞ さすそらもなき

太宰大弐高遠
ひかげさし をとめのすがた 見てしより うはのそらなる ものをこそおもへ