和歌と俳句

新勅撰和歌集

釈教

弘法大師
法性の むろとといへど わがすめば うゐのなみかぜ よせぬひぞなき

空也上人
有漏の身は 草葉にかかる つゆなるを やがてはちすに やどらざりけむ

大僧正行基
のりのつき ひさしくもがなと おもへども 小夜ふけにけり ひかりかくしつ

千観法師
法身の 月はわが身を てらせども 無明のくもの 見せぬなりけり

大僧正観修
ねむごろに とをのいましめ うけつれば いつつのさはり あらじとぞおもふ

大僧都深観
草木まで ほとけのたねと ききつれば このみのならむ こともたのもし

返し 大僧正明尊
たれもみな ほとけのたねぞ おこなはば この身ながらも ならざらめやは

大僧正明尊
むつのわを はなれてみよの ほとけには ただこのつゑに かかりてぞなる

權大納言行成
むかし見し はなのいろいろ ちりかふは けふのみのりの ためしなるらん

法成寺入道前摂政太政大臣道長
きてつぐる 人なかりせば ころもでに かくるたまをも しらずやあらまし

少僧都源信
そでのうへの たまをなみだと おもひしは かけけむきみに そはぬなりけり

冷泉院太皇太后宮
けふたつる たみのけぶりの たえざらば きえてはかなき あとをとはなん

選子内親王
世々をへて ときくるのりは おほかれど これぞまことの 心なりける

選子内親王
みなひとの ひかりをあふぐ そらのごと のどかにてらせ くもがくれせで

選子内親王
まれらなる のりをききつる みちしあれば うきをかぎりと おもひぬるかな

式子内親王
けちがたき ひとのおもひに 身をかへて ほのほにさへや たちまじるらん

皇太后宮大夫俊成
みなしごと なになげきけん よのなかに かかるみのりの ありけるものを

皇太后宮大夫俊成
たにがはの ながれのすゑを くむひとも きくはいかがは しるしありける

皇太后宮大夫俊成
たおりつる はなのつゆだに まだひぬに くものゆくへを すぎてきぬらん

皇太后宮大夫俊成
しろたへに 月か雪かと 見えつるは にしをさしける ひかりなりけり