八重にほふ軒ばの櫻うつろひぬ風よりさきにとふ人もがな
新古今集・春
はかなくて すぎにしかたを かぞふれば はなにものおもふ 春ぞへにける
新古今集・恋
さりともと待し月日ぞうつり行心の花の色にまがへて
新古今集・夏
まどちかき たけのはすさぶ かぜのねに いとどみじかき うたたねのゆめ
新古今集・夏
ゆふだちの くももとまらぬ 夏の日の かたぶくやまに ひぐらしのこゑ
新古今集・秋
千たび打つ きぬたの音に 夢さめて 物思ふ袖の 露ぞくだくる
かぜさむみ このははれゆく よなよなに のこるくまなき ねやのつきかげ
新古今集・恋
いまはただ こころのほかに きくものを 知らずがほなる をぎのうはかぜ
新古今集・恋・小倉百人一首
玉の緒よ絶えなばたえねながらへば忍ぶることの弱りもぞする
新古今集・恋
わすれては うちなげかるる ゆふべかな われのみしりて すぐる月日を
きみまつと ねやへのいらぬ まきのとに いたくなふけそ やまのはのつき
はかなくぞ しらぬいのちを なげきこし わがかねごろの かかりける世に
新古今集・雑歌
斧の柄の朽ちし昔は遠けれど有りしにもあらぬ世をもふるかな
新古今集・雑歌
暮るる間も待つべき世かはあだし野の末葉の露に嵐たつなり
新古今集・釈教
しづかなる暁ごとに見渡せばまだ深き夜の夢ぞかなしき
新勅撰集・恋
いかにせむ ゆめぢにだにも ゆきやらぬ むなしきとこの たまくらのそで
新勅撰集・春
たがかきね そことも知らぬ 梅が香の 夜半の枕に なれにけるかな
ふきむすぶ たきはこほりに とぢはてて 松にぞ風の こゑはをしまぬ
新勅撰集・釈経
けちがたき 人のおもひに 身をかへて ほのほにさへや たちまじるらむ