和歌と俳句

新勅撰和歌集

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前関白道家
わがこひの もえてそらにも まがひなば ふじのけぶりと いづれたかけん

関白左大臣教実
わがこひは なみだをそでに せきとめて まくらのほかに しるひともなし

八條院六條
わがとこの まくらもいかに おもふらん なみだかからぬ 夜半しなければ

二條院讃岐
かはづなく かみなびがはに さくはなの いはぬいろをも ひとのとへかし

殷冨門院大輔
うちしのび おつるなみだの しらたまの もれこぼれても ちりぬべきかな

權大納言家良
しのびかね なみだのたまの 緒をたえて こひのみだれぞ そでにみえゆく

正三位家隆
たがために ひとのかたいと よりかけて わがたまのをの たえむとすらん

後京極摂政前太政大臣良経
よしのがは はやきながれを せくいはの つれなきなかに 身をくだくらん

藤原頼氏朝臣
つれなさの ためしはありと よしのがは いはとがしはを あらふしらなみ

藤原盛方朝臣
すみだがは せぎりにむせぶ 水のあわの あはれなにしに おもひそめけむ

法性寺入道前関白家参河
ひとしれず ねをのみなけば ころもがは そでのしがらみ せかぬひぞなき

源有房朝臣
なみだがは そでのしがらみ かけとめて あはぬうきなを ながさずもがな

道因法師
つらきにも うきにもおつる なみだがは いづれのかたか ふちせなるらん

平茂時
こがれゆく おもひをけたぬ なみだがは いかなるなみの そでぬらすらん

如願法師
やまがはの いしまのみづの うすごほり われのみしたに むせぶころかな

權大納言忠信
まきもくの あなしのかはの かはかぜに なびくたまもの みだれてぞおもふ

侍従具定母
ながれての なをさへしのぶ おもひがは あはでもきえね せぜのうたかた

正三位家隆
おもひがは みをはやながら みづのあわの きえてもあはむ なみのまもがな

權中納言長方
おちたぎつ はやせのかはも いはふれて しばしはよどむ なみだともがな

皇太后宮大夫俊成
世とともに たえずもおつる なみだかな ひとはあはれも かけぬたもとに