よみ人しらず
あけぬよの心地ながらにやみにしをあさくらといひし聲はきききや
返し 藤原実方朝臣
ひとりのみきのまろどのにあらませばなのらで闇にまよはましやは
赤染衛門
なのりせば人しりぬべしなのらずばきのまろ殿をいかで過ぎまし
恵慶法師
ひと巻にちぢの黄金をこめたれば人こそなけれ聲は残れり
返し 紀時文
いにしへのちぢの黄金はかぎりあるをあふばかりなき君が玉章
清原元輔
かへしけむ昔の人の玉章をききてぞそそぐ老の涙は
祭主輔親
花のしべ紅葉の下葉かきつめて木のもとよりやちらむとすらむ
康資王母
尋ねずばかきやる方やなからまし昔のながれみくさつもりて
後三條院越前
いにしへの家の風こそうれしけれかかる言の葉ちりくと思へば
後三條院御製
秋風にあふ言の葉やちりぬらむその夜の月のもりにけるかな
よみ人しらず
たえやせむいのちぞしらぬ水無瀬川よしながれても心みよ君
規子内親王
いはぬまをつつみしほどにくちなしの色にやみえし山吹の花
藤原孝善
うれしさをけふは何にか包むらむ朽ち果てにきとみえし袂を
和泉式部
かたらへばなぐさむこともあるものを忘れやしなむ恋のまぎれに
六院齋院宣旨
忍び音をききこそわたれほととぎす通ふ垣根のかくれなければ
馬内侍
うかりけるみのふの浦のうつせ貝むなしき名のみたつはきききや
藤原顕綱朝臣
おぼつかなつくまの神のためならばいくつかなべの數はいるべき