和歌と俳句

後拾遺和歌集

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藤原道信朝臣
あふみにかありといふなるみくりくる人苦しめのつくま江の沼

永源法師
こひしてふことをしらでややみなましつれなき人のなき世なりせば

赤染衛門
つれもなき人もあはれといひてまし恋する程を知らせだにせば

源道済
身をすてて深き淵にも入りぬべし底の心の知らまほしさに

大中臣能宣朝臣
こひこひてあふとも夢にみつる夜はいとど寝覚めぞわびしかりける

大中臣能宣朝臣
唐衣むすびしひもはさしながら袂ははやく朽ちにしものを

返し よみ人しらず
朽ちにける袖のしるしは下紐のとくるになどか知らせざりけん

能因法師
錦木はたてながらこそ朽ちにけれけふのほそ布胸あはじとや

西宮前左大臣高明
須磨の蜑の浦こぐ船の跡もなく見ぬ人こふる我やなになり

西宮前左大臣高明
さりともと思ふ心にひかされて今まで世にもふるわが身かな

返し 小野宮太政大臣女
たのむるに命ののぶる物ならば千年もかくてあらんとや思ふ

小辨
思ひしる人もこそあれあぢきなくつれなき恋に身をやかへてん

平兼盛
人しれず逢ふをまつまに恋ひ死なば何にかへたる命とかいはん

永成法師
恋ひ死なん命はことのかずならでつれなき人の果ぞゆかしき

中原政義
つれなくてやみぬる人に今はただ恋ひ死ぬとだにきかせてしがな

良暹法師
あさねがみ乱れて恋ぞしどろなる逢ふ由もがな元結にせん

藤原國房
唐衣そでしの浦のうつせ貝むなしき恋に年のへぬらむ

左大臣俊房
われが身はと帰る鷹となりにけり年はふれどももとは忘れず

右大臣顕房
年を経て葉がへぬ山の椎柴やつれなき人の心なるらん

道命法師
嬉しとも思ふべかりし今日しもぞいとど歎きのそふ心地する