原 石鼎
玉虫の玉のる桐の広葉かな
玉虫の葉を食む見ゆる月夜かな
玉虫の羽とぢたたむかそけさよ
花氷頂の色何の影
とけそむる稜にふれみぬ花氷
花氷そがひに扇つかひかな
花氷花に埋れて溶け入るよ
船虫の甲ひからせぬ月の巌
淋しさは船一つ居る土用浪
たそがれを降り出し雨や土用浪
常夏の温泉の真昼の鏡かな
七姫に若きbardのわれも居る
昇天す五色の糸の玉の箜篌
星も珠も汗もかがやき大団円
ふけて来し雲に風情や夏の月
松の根のなかなかくらし夏の月
蝉とべば蝉に光りや夏の月
番犬の耳かく音や夏の月
影よりも纜ほそし夏の月
杣が住む里さへ遠し夏の月
浜に歩む袖影ひろし夏の月