和歌と俳句

原 石鼎

58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68

玉虫の玉のる桐の広葉かな

玉虫の葉を食む見ゆる月夜かな

玉虫の羽とぢたたむかそけさよ

花氷頂の色何の影

とけそむる稜にふれみぬ花氷

花氷そがひに扇つかひかな

花氷花に埋れて溶け入るよ

船虫の甲ひからせぬ月の巌

淋しさは船一つ居る土用浪

たそがれを降り出し雨や土用浪

常夏の温泉の真昼の鏡かな

七姫に若きbardのわれも居る

昇天す五色の糸の玉の箜篌

星も珠も汗もかがやき大団円

ふけて来し雲に風情や夏の月

松の根のなかなかくらし夏の月

蝉とべば蝉に光りや夏の月

番犬の耳かく音や夏の月

影よりも纜ほそし夏の月

杣が住む里さへ遠し夏の月

浜に歩む袖影ひろし夏の月