和歌と俳句

原 石鼎

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ゆふだちや大水馬ずつとひき

河骨の水の紺碧翡翠まろぶ

握る子鮎の口唇につけ子供かな

游ぎゐる鮎とは滑擦ることか

はねあがる鮎覆ひ蚊帳に入りにけり

朝粥にかまぼこうまし青芒

刈りし跡急なる岨や青すすき

ひともしし自転車なんど青芒

健に居りてめでたし青すすき

健かに人等はありぬ青芒

庭隅へホース向けけり青芒

とびたるは赤しやうびんや谷はざま

宵はやみ大雨につる蚊帳青し

白栄やあないの風呂にまだたたず

あらばえにつぐ白栄や梅雨のはて

白ばえや枝垂柳のふさふさと

白栄やカステーラなどくひこぼし

老鶯はー角よりや峰の腹

草わけの鹿の子等こちを見て居りぬ

顔かしげふとものを見し蜥蜴かな

蜥蜴の尾きれて躍れる巌の上

日に光ろてとがる真紅の蓬藁かな

白々といまだ稚き蓬藁かな

雨に出でて二三顆摘みし蓬藁かな

大蟻のじつと咬みたる蓬藁かな