原 石鼎
南に小さき銀河や夏の夜
わがひざに前に夏夜の月の影
大涅槃の偉いさ想ひ昼寝しぬ
大夏のけふよりぞとも夕焼雲
初蝉やそぞろにくもり曇る日の
一とこに本蝉なくに窓二つ
洋館の二階の窓や枝に蝉
夏の海に混沌として海鼠かな
土用星洋に珊瑚のもゆるらむ
星もまた土用の色に土用浪
ひんがしに星一つ土用夜明まへ
神々に祈りしをれば夏の靄
ほしいままに月と日を見て真夏待つ
きよらげの空もつばめも夏のもの
さむきほど不順の夏の星座かな
秋ちかく夜あけにちかく星と月
星夜ながらに明け白み秋のまぢかなる
秋ちかくいつしか富士へ入る日かな
日中の日に力みち秋近し