和歌と俳句

原 石鼎

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紅躑躅白つつじにて五月かな

柏餅蓬餅まで蒸しあがり

夏めきし午後薔薇色のAIREARP

をちこちにふとかなかなの明易き

金色の雲ばかり見え明け易き

武蔵野は一つ家ありて明易き

武蔵野の幾とこ灯り明易き

三宅島は大噴火梅雨の月と日へ

世田谷は梅雨めく夜半のほととぎす

山蟻のひとつ穴を出て二階かな

穴を出し山蟻ひかり新畳

おととひの地震おもひつつ蚊帳に寝ね

夜すがらの月をながめぬ蚊帳のうち

放電火月暈雲ととどろきて

月とゐて星高々と涼しけれ

富士を見終へて炎日もゆる窓へ立つ

ものみなのねむれる夜半の月に夏

大夕焼して靄の下七色に

七月のひぐらしの旧句想ひけり

大いなる夏くるさまにくれにけり

小さやけき国なれど大き灘の夏

よろこびを日に日に覚え夏に居る

富士を北へへだりつつ夏の夕日かな

みんなみに雲の峰らし朝まだき

秋はちかむ星夜ながらに明けしらみ