巣立鳥相阿彌の庭に下りて鳴く
相阿彌が据ゑける石に梅雨の苔
蓮の圖のいと古りたるを見て凉し
雷くらし眼前蓮の圖に對す
亀ケ城白露の径をわけのぼる
星祭る竹が大手の跡に立つ
露の黍七夕竹も露ふかし
馬柵直に嶺よりくだる葛の花
兎跳ね犬をどり入る葛の花
地獄沼荒凉と芒穂にいでぬ
火口壁まなかひに失せて霧吹けり
地獄沼霧はしるとき波たたむ
湯華掻く岩うかびたり霧の瀬に
龍膽やながるる霧を岩が堰く
山霧や榾火に犬をいたはりつ
古峰神社御祓札霧の爐の上に
山霧に祠まつりて温泉ぞ噴ける
霧にほひ岩の温泉白くにごりたり
湧く霧の湧きつぐひまに湖見ゆる
裾山の霧や白樺立ちまじり
岩つばめ檜原湖を霧がまたかくす
馬柵による波かぎりなし葛の花
船の波馬柵に寄せ打つ冷かに
夕波に磐梯が立てり霧晴れて