青苔に山茶花にほふ神迎
冬紅葉甲斐深き山うかびたり
満月の流水落葉了りけり
なほ残す去りて二十日の霜の菊
堂後なる紅梅にほふしづけさよ
春蘭や暗きに打てる紙砧
蝶の影紙漉く槽は波立ちて
枝移る春禽あれど雲くらし
夕雲の馬酔木に居りて夜も去らず
春暁や末まだ覚めぬ花の列
鯛漁季せまる春日の沈むなり
芽立つ中渦いそぐなり阿賀野川
瀧みだれ大残雪にひびき落つ
おぼろにて残雪殊に前白根
倒れ木に雪解の波や黄鶺鴒
夜蛙や溶きてもかたき由吉野葛
陀羅尼助軒端の燕孵りけり
著莪咲くや谿に階なす吉野建
雲の中矢車めぐる龍之郷
芍薬や水分の神霧に寂び
うぐひすのこだまの中に滴りつ
荒れざまや若葉の霧の噎び入り
葭雀饒舌つくす蹶速塚