深き夜の玻璃戸を搏ちて花嵐
暁のベンチ濡れゐる桜かな
満園の花や屋上喫茶店
夜桜へ出てしまひたる下宿かな
花篝更けたる火屑こぼしけり
梅林にさしかかりたる瀬音かな
げんげ束白混じれるをよしとせり
土筆剥きに我も加はりし燈下かな
沈丁に小石平らや女官邸
ガーデンの女あるじやヒヤシンス
枳殻の芽西日に透いて高ゥな
若蘆の水に溜れり船の煤
青麦や犬つれて和服師団長