和歌と俳句

星野立子

約束の時間正しく賀客来る

老の春若き人々讃へつゝ

よべの月美しかりし年明け

母許や春七草の籠下げて

御慶述べ思ひ出したること伝へ

頂きし銀の小物よ小正月

遺されし筆硯座右に初句会

年新た美しく老い度く希ふ

鎌倉の松の緑に賀客かな

松過ぎのがらりと変る人通り

なつかしき七種粥よ小母は亡し

書ぞめをせし筆ついで便り書く

誰も来よ今日小正月よく晴れし

二日の日沈みつゝあり烏とび

ドアノックして改めて御慶述ぶ

お降の雷ともなひて怖ろしや

五日より句会つゞけり松も過ぎぬ

美しき老の春著と敬ひぬ

初髪の日本髪なは白髪なし

初仕事形見の朱筆とり出だし

年明けて二度目の墓参四音晴

ほどほどになすことおぼえ老の春

十句より一句を作り老の春

松過ぎて漸く天気崩るゝか

元旦の墓に詣でて落ちつきぬ

初詣誘ひし人の皆来たり

初夢を話しゐる間に忘れけり