和歌と俳句

皆吉爽雨

肩借りて足袋ぬげるあり若菜摘む

われらまた射初見るなる息を断つ

下向路の泉香にたち初詣

老の口初笑ひして噤むなる

神橋のことに飛雪裡初詣

幾泉見て初詣深大寺

賀状よむなほ嵩ありて一人ひとり

花鳥もて挽歌をはりぬ読はじめ

弓構へに入ると雪映え弓始

射初めせし残身をなほ崩さざる

おぼえなき名にして句あり賀状よむ

書初のことに一字をほめやりぬ

大硯の巌をかたへ筆はじめ

世に在らぬ如く一人の賀状なし

かかる丈の衣桁の春著着るものか

受くる子と賀状配りと歳いづれ

刀自の読む咳まじりなり歌留多とる

初富士に雲二はしら麓より

それぞれの杉に天涯初詣

奥社へは氈苔の磴初詣

初夢を言ひあふに死の一語あり