年たつや駒嶽にはるけき釈迦の嶮
老いがたくこころにしみるはつみそら
ハム切れば月さす障子松の内
春燈やはなのごとくに嬰のなみだ
風冴えて高嶺紺青雪のこる
雲きれて春料峭と嶽のいろ
百姓のみな燈をひくく春祭
芙蓉峰うち仰ぎもす汐干狩
川波の手がひらひらと寒明くる
濁流に花の雨やむ日の像
西方へ歿る日は古風花堤
紅梅のさきしづまりてみゆるかな
紅梅になほななめなる日の光り
梅に棲み恒雪のぞむ谿むかひ
麦あをみ雨中の雪嶺雲むるる
富士ひくし湖そひゆけばしどみ咲く
麦青し端山もぬるるよべの雨
やまなみに宿雪かびろく白根嶽
松みどりむらだつ山も奥まりぬ
冴えかへるたましひにしむ香けむり
弥陀の掌に霊のもろもろ春の燭
人の死や春ゆく水に月のかげ
鳶四方に遅花しろむ観音寺
蟻いでて庭苔ふかし白つばき