外光及びて晩夏家居の妻豊か
をんな哺む白い舌めく柏餅
麦藁帽乗せて農家の石燈籠
高草刈られし迹をよろこび蜆蝶
蜘蛛の高巣にさかしまの蝉不しあはせ
鎖いつぱいに橋へ出てゐる秋の犬
廃屋は人目なしとて柘榴裂くる
頂上を素通る秋声と思はめや
もつるる苅萱「女家族」へ帰りゆく
はたはた飛んで他人の視線の前へ行きぬ
襟のホック寛ろげ帰路や夜学生
秋鐘裡わが影際立ち且薄らぐ
霧の半月「隻手の声」の光なす
女ニコヨン裾さばきなく夕野菊
冬の泥の坪踏みひろげ家鴨どち
明星現れて鳶舞ふ凩程よしと
壜はまどかに鏡は直し冬将軍
冬虹消ゆ三層閣前過ぐる間に
月代にほはし応ふる灯さへ無き境に
青年一団リヤカー転宅音冴えて
福寿草天使を銀の線描きに