和歌と俳句

中村草田男

美田

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胸へ胸へ帰帆の数海燕

香は他郷ながらも南の夜

青芦は自ら立錐余地も無し

発動船の心音去来行々子

玄関から灯からすぐ消えセルの友

父外国に母里にありや閑古鳥

母の日やけふは熟路を歩まんか

菜の花日和母居しことが母の恩

詣で人貝塚掃くよ漁夫の墓

少年の焦燥あめんぼうのにほひ

天からきた影を布置して麦の秋

ここにしばし拡げし指の間緑気織る

田植終りぬ円空へ田舟底平ら

奏でる海へ音なく大河勿忘草

何も問はねど横顔の薔薇薫りくる

葱坊主大きな弟を肩ぐるま

軽羅の末子門前無人の一と踊

雌伏の頃の友住みし町初苺

畳屋兄弟肘うち揃へ盆仕事

葉桜や末子が追ひ来て橋鳴らす

葉桜や後へは還れぬ黒き川

名声消さず為事せぬ人アマリリス

午笛の遅速に何の優劣夏来迎ふ

父の仕事の音くるあたり昼寝の子

田植すすむ球場勝点崇みつつ