和歌と俳句

中村草田男

美田

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初日燦々海女の膝の間鯛一尾

寒鴎一つ歩前足下に魂むなし

北窓も南窓も又廊も戸ざす

冬館昼の闇見る身をそばめ

昼の闇さむき香古書の香にかよふ

両刀重き武士の草履の音冴ゆるか

碑文が宣るは思想の総合梅残株

蜑が家の冬灯軒漏り屋根漏りて

藁屋つづきわが宿寒夜の枢落す

昔のさまに遠吠蜑の里夜寒

海女の羽子網を弾ね沙へ停まり

冬日たのしむ犬浜沙を前押しに

深谷からも定座の声のきりぎりす

牛の涎馬のうなづき如是すずし

青眼白眼牛の目うごく緑蔭

牧夫来て馬首叩く音日の盛り

逸馬となり奔馬となり牧の夏遥か

浅間もとより街に片陰なき刻ぞ

城は日盛山市あらはやポプラ越し

今人来往幹撫づ古城のさるすべり

城址に立膝少年夏霞

かへること遅き燕や山市に満つ

「造型」のささくれや虹へ飛行雲

遠ネオン読めて意味なしも旅寝

夜鴨の声はかなしむばかり人には悔