和歌と俳句

堅き梨に鈍き刃物を添てけり 漱石

十日路の海渡り来ぬ梨の味 碧梧桐

梨もいづ卓布に瓦斯の青映えて 山頭火

梨むくや故郷をあとに舟くだる 蛇笏

店越に紺青の海梨を買ふ 林火

ふるさとの梨に燿る陽のしづかなる 信子

伯耆より到来つづき梨の秋 爽雨

濡れ指をかざして梨のうまかつし 爽雨

梨を喰み雨夜の話題遠き人へ 林火

わが聞いてわが噛む音の梨の秋 爽雨

大音に落ちたる梨の怪我もなし 静塔

梨園の番犬梨を丸齧り 静塔

梨取れば寺院案ずる素振也 耕衣