和歌と俳句

加舎白雄

猪の篠根掘喰ふかれ野かな

臘八にせめて疑ふ人もがな

髪置は千代経て白きためしかな

年のほど十夜詣と呼れけり

樒売家も十夜のともしかな

達磨忌や履ふみきりし箱根山

達磨忌の口とりは昆布に山椒かな

達磨忌や寒うなりたる膝がしら

川ぞひや木履はきたる鉢敲

替履のうしろさびしや寒念仏

引す ゝむ大根の葉のあらしかな

捨られぬものは心よ冬籠

冬籠こもり兼たる日ぞ多き

埋火や夜学にあぶる掌

埋火やうちこぼしたる風邪薬

炭がまやぬりこめられし蔦かづら

語る夜のつきづきしさよ桐火桶

人老て炬燵にあれる踵かな

いちはやくもへて甲斐なし穂だ榾の蔦

網代木のそろはぬかげを月夜かな

とし籠攅火の御燈おがみけり

から鮭の口はむすばぬならひかな