はたはたは少女の指にやはらかき
はたはたをあはれと放つ掌を見たり
龍胆を摘みてひさしく手にはせる
野に出でて龍胆愛でしけふも暮れぬ
ラグビーの野辺も稲城も狐色
ラグビーの味方も肉を相搏てり
ラグビーの密集胸を腕を踏む
ラグビーの泥を膝蓋に肩胛に
駅さむく高き弧燈に照れるもの
駅に見て冬の太白地に低き
寒き夜の貨車に車掌の燈はあれど
たはけよと罵らへしひとや義士祭
義士祭源吾の齢わが過し
義士祭この世に享けし人の齢
祭らるる義士等妻子棄て去りき
年わかの義士矢頭氏を祭りけり
正月の髷を歌劇に道に見き
春潮やわが総身に船の汽笛
春潮や汽笛のこだまそのこだま
東風の船汽笛真白く吹きやめず
東風の波埠頭の鉄鎖濡れそぼつ
金山の雲のいかづちとよもせる
郭公やねむりのあさき旅の夜を