釣瓶落しといへど光芒しづかなり
釣瓶落しひとたび波にふれにけり
顔見世の噂や火鉢拭きながら
青き葉を一枚立てて柚釜かな
海老活きてひそみしさまの柚釜かな
姿よき柚釜を占めて牡蠣ひとつ
波郷忌や富士玲瓏の道行きて
濤音や返り咲きして桃の枝
梨どころ来れば道辺に返り花
返り咲く草木瓜あれば畦の蝶
返り花満ちてあはれや山ざくら
霜晴れや朝餉に代るふかし藷
紅葉焚くけむり一縷となりにけり
鰤の海沖津白波加へけり
佳き鉢に替へてひらきぬ福寿草
年祝ぐや浦の蛤磯の海老
撒手拭得たりと受けて初芝居
鯛焼の鰭よく焦げて目出度さよ
懐手解けば鯛焼の香なりけり
幕あひや鯛焼とどく楽屋口
寒餅を焼くたのしさに火桶置く
寒餅に蓬の香ありめでて焼く
毛糸帽老の長眉隠しけり
毛糸帽わが行く影ぞおもしろき
毛糸帽いぶかり見上ぐ辻の犬