機関車は裾も湯げむり初詣
行く限り鉄路かがよふ初詣
初詣終へ来てなほも伊勢駛る
初詣終へ来し汽車も燈るころ
初詣終へし轣轆夜の過ぐる
ちかき田ぞ神の若井をいただける
年暁けぬ竹をまじふる神の杜
一月やうぶすなちかく野鍛冶の火
燕来る宙宇の戦勝たでやは
陽炎に立ちて我等も自爆の意
百千鳥句を見て未だ君を見ず
君癒えよことしの蝌蚪も生れ出づ
なほ眠し春暁の川透きとほり
春暁の川の激ちもしらじらし
焼山のにほへる伊賀の国に入る
古人また棚田真青に旅ゆけり
いただきを雲霧過ぎゆく修羅の木々
城塁や咲かむとしつつ藤白し
伊賀上野蘇枋の花を以て古ぶ
花蘇枋逢ふは他郷の人ばかり
牡丹なほ蕾かたしや復も来む
鰤を割く店見てここや伊賀上野
暮遅し鞴動かす町も過ぎ
春惜しむここも短かき坂の町
緋毛氈われ等がために春の暮
芽ぶく木々暮れて枯木と異ならず
歩み寄る炉塞ぎし間の扁額に
塞ぎたる炉上の畳やはらかに
塞ぎたる畳の下に炉を踏みつ
春の星海に見なれてけふ伊賀に
百合白くみ魂は天に漲れり
百合白し天より還る提督に
松蝉や提督の死処天涯に
松蝉のほか陸上に声もなし
息深く松蝉鳴くに立ち祷る
暮秋いま伊勢の城々天守なし
峡中にはや月もあらず草まくら
眉老いて霜はしんしんたる家郷
御霊の上雪降ることのつづきゐむ
雪さぞや突撃白兵戦地点
雪掻きて部隊の墟を一目見む
夜は祷る寒き極星たどきとし
皇国は占守よりして雪しろし
寒風に君達国は常若に
海の浜きのふぞ別れ霜なりけり
初蝶の遠きところを過ぎつあり
かぎろへる砂丘の窪の炎えさかり
春水と行くを止むれば流れ去る
鷹の羽を拾ひて持てば風集ふ
鰤を見る身に帽杖を著けずして
入学の母子の道の海寄りに