晨鐘を今打ち出だす去年今年
乱雑の中に秩序や去年今年
元日や炬燵の間にも客招じ
いのち守る寒燈一つ去年今年
元日や句は須く大らかに
元日や深く心に思ふこと
例の如く草田男年賀二日夜
松ケ枝にかゝりて太き初日かな
老の春写真をくれと人いふも
ぶらぶらと恵方ともなく歩きけり
起り来る事に備へて去年今年
移り住む田舎の地図や年始状
赫奕として初日あり草の庵
耄碌と人に言はせて老の春
忘るゝが故に健康老の春
三ケ日昔恋しいと遊びけり
貧乏の昔恋しや三ケ日
祖母の世の裏打ちしたる絵双六
初空や東西南北其下に
初空を仰ぎ佇む個人我
傷一つ翳一つなき初御空
古を恋ひ泣く老や屠蘇の酔
推敲を重ぬる一句去年今年
元日や午後のよき日が西窓に
初夢のうきはしとかや渡りゆく
吉兆を呉れぬ破魔矢を贈らばや