元日や海よりひくき小松原 万太郎
元日の鳥が来て鳴く裏の川 信子
元日や山ふところの麦ばたけ 万太郎
元日の端山に立てる烟かな 万太郎
元日を白く寒しと昼寝たり 三鬼
年の禍元日すでにひそみけり 万太郎
波音のなかに元日おはりけり 万太郎
元日の坂登りをり何かあるごとく 楸邨
老木の根元日きよく掃かれけり 万太郎
病室に元日の雨の傘をつく 波郷
元日の夜の妻の手のかなしさよ 波郷
元日の門を出づれば七人の敵 虚子
元日や動物園の裏で坂 万太郎
元日の新しい顔で友ら来る 草城
元日やはげしき風もいさぎよき 草城
元日のうるはしかりし賀客なし たかし
元日や炬燵の間にも客招じ 虚子
元日や句は須く大らかに 虚子
元日や深く心に思ふこと 虚子
元日や露地のおくにて崖の下 万太郎
元日や午後のよき日が西窓に 虚子
元日やふとしく立てる枯榎 万太郎
元日や煙突よぎる鴎どり波郷
元日のつぶやき寒しオルゴール 万太郎
元日やうすく置きたる庭の霜 万太郎
若き元日易々として死を口にせる 楸邨
元日や道を踏みくる鳩一羽 波郷
元日の句の龍之介なつかしき 万太郎
元日の梅ほころびし二三輪 万太郎
墓原の元日しまのひかりかな 万太郎
元日暮れ七十九齢一と日過去 風生
元日や多摩を鎮護の高尾山 秋櫻子
元日のわが素手よ今年また頼む 楸邨
元日の素足は遠きものを感ず 楸邨
元日の袖にひかりぬ肘ゑくぼ 楸邨
元日の黒き廊下の凍を踏む 悌二郎
元日の夜を流木の谿泊り 不死男
元日の日があたりをり土不踏 波郷
元日の夜の注射も了りけり 波郷
元日の午下の日のなほ蕩々と 風生
元日や鶴の絵のこる一瓶子 秋櫻子
元日の虹は氷を出でざりき 楸邨
水底に元日の日のあふれけり 林火
日暮れてはつねの老人お元日 林火