和歌と俳句

春の山

まろまろとふわふわとして春の山 虚子

雲なくて聳ゆうすいろ春の山 蛇笏

手にゲーテそして春山ひた登る 静塔

春山を削りトロツコもて遊ぶ 三鬼

春山をすこし上りて四つ目垣 虚子

春嶺を重ねて四万といふ名あり 風生

来し道のうねうね白し春の山 立子

春山に滝一すぢや尼の熱 静塔

湯の邑を靨にふくみ春の山 風生

青淵につづき黒淵春の山 青畝

春の山歪つながらも円きかな 虚子

春の山湯邑のために高からず 風生

直線の曲線の春の山 虚子

春山に新羅仏塔尖りけり 青畝

春の山屍をうめて空しかり 虚子

春山の噴煙天の鉾となる 青畝

春の山それぞれ昔火を噴きし 青畝

高からず低からずして春の山 風生

どの岩も石佛に見え春の山 立子

曇り来て春嶺いくつ色失ふ 悌二郎

春嶺の涯藍濃きは伊豆ヶ嶽 悌二郎

春嶺の遙かの奥に遠蔵王 悌二郎