和歌と俳句

高浜虚子

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落椿紅白にして尽大地

東山西山こめての京

世直りて草の庵の雛祭り

傍らに人無き如くにあり

閉ざしたる老の我儘が門

離々として鬱々として春の草

雪残る村の小家を打ち囲み

妙高の雪は雲間にまかがやき

立山の其の連峰の雪解水

ここに来て百万石花見せん

姉妹の著物貸し借り花の旅

花の雨強くなりつつ明るさよ

起きぬけの気むつかしさや花の雨

草の戸を叩きて又も花の雨

春雨の音に目ざめし旅がへり

花にやや遅れたれども鐘供養

春の空笠の如くにかぶさりぬ

直線の曲線の春の山

大空に春の雲地に春の草

忽に景色変りて花の雨

花見にと馬に鞍置く心あり