和歌と俳句

高浜虚子

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春の空人仰ぎゐる我も見る

春の空人仰ぎゐる何も無し

椿立ち直りつつ花落とす

落椿土に帰せんとしつつあり

鎌倉の古き土より牡丹の芽

花下にありと云ふばかりなり花も見ず

庭広しよりどころなくの飛ぶ

考へを文字に移して梅の花

春の山歪つながらも円きかな

春水や一つ浮きたる水馬

かちかちと目刺の骨を噛みにけり

落椿美し平家物語

世に生きて青葉隠れの遅桜

木々の芽復興の尼悲願

春の天おほどかにしてやや曇る

山の背をころげ廻りぬ春の雷