春の空人仰ぎゐる我も見る
春の空人仰ぎゐる何も無し
風椿立ち直りつつ花落とす
落椿土に帰せんとしつつあり
鎌倉の古き土より牡丹の芽
花下にありと云ふばかりなり花も見ず
庭広しよりどころなく蝶の飛ぶ
考へを文字に移して梅の花
春の山歪つながらも円きかな
春水や一つ浮きたる水馬
かちかちと目刺の骨を噛みにけり
落椿美し平家物語
世に生きて青葉隠れの遅桜
木々の芽や寺復興の尼悲願
春の天おほどかにしてやや曇る
山の背をころげ廻りぬ春の雷