草まくらゆふ露はらふ篠の葉のみやまもそよに幾夜萎れぬ
浪の上の月を郡のともとしてあかしのせとを出づるふなびと
いもとわれといるさの山は名のみして月をぞしたふ有明の空
駒なづむいはきの山を越えわびて人もこぬみの浜にかもねむ
みやこ思ふなみだのとまとなるみがた月に我とふ秋の潮かぜ
露しものをぐらの山に家居してほさでも袖の朽ちぬべきかな
秋の日に都をいそぐしづのめがかへるほどなきおほはらの里
浪の音に宇治の里人よるさへや寝てもあやふき夢のうきはし
柴の戸の跡みゆばかりしをりせよ忘れぬ人のかりにもぞとふ
庭のおもは鹿のふしどと荒れはてて世々ふりにけり竹編める垣
宿に鳴く八聲の鳥はしらじかし置きてかひなき暁のつゆ
手馴れつつ末野を頼むはし鷹の君の御代にぞ逢はむとおもひし
君が代に霞を分けしあし鶴のさらにさはべの音をや鳴くらむ
いかにせむつら乱れにしかりがねのたちどもたちども知らぬ秋の心を
萬代とときはかきはにたのむかなはこやの山の君がみかげを
天つ空けしきもしるし秋の月のどかなるべきくものうへとは
我が君の光ぞそはむ春の宮てらすあさひの千代の行く末
をとこ山さしそふ松の枝ごとに神も千歳を祝ひそむらむ
秋津島よもの民の戸をさまりて幾よろづよも君ぞたもたむ